前回の記事では、グレタ・トゥーンベリさんの言いたいこと、地球温暖化のヤバさについて説明しました。
このまま何も対策しないと、数十年後に地球は人間が住めなくなるほど過酷な環境になる可能性だってある。
でも、そんなヤバいくらいの温暖化、どうやって対策するの?
この問題と対策について、頭のいい人たちが色々と考えています。ここでは、人間が作り上げた環境破壊のシステムと、その解決手法についてご紹介していきます。
環境破壊は人間がつくった便利なシステムが原因
2020年に、大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部准教授の斎藤幸平さんが出版した著書「人新世(ひとしんせい)の資本論」に、大きなヒントと著者の答えが書かれています。
本著はとても難しいことが書かれているので、私なりの表現で簡単に説明しようと思います。
まず環境破壊は、現代の多くの国で採用されている「資本主義」が元凶である、ということ。
資本主義とは、例えば日本のように大企業が、多くの労働者を雇って、様々なサービスや製品を生み出している、まさに我々の日常のようなシステムです。
もっと簡単に言うと、お金を持った人(資本家)が、その他の主にお金を持たない人(労働者)を使って物を作り、その物を売ったお金でお金持ちは更に儲かる。そんな仕組みです。
このシステムのおかげでどんどんお金持ちになった人たちは、どんどん競争をしたり、科学にお金を投資したりして、様々な便利な物ができました。
電気、車、冷蔵庫、エアコン、テレビ…
現代、とくに日本では、ほとんどの人がこれらの恩恵を受けられていますよね。
しかしそれらが生み出されるためには、大量の化石燃料、化学物質などが使用され、温暖化だけでなく土壌汚染、生態系の破壊など、たくさんの問題が積み重なることになったのです。
研究者の中には、科学が発展することで、この環境問題、温暖化問題は解決できるはずだ。そう考える人もいるようです。
しかし斎藤幸平さんはこう言います。
「中核部は、資源を周辺部から掠奪し、同時に経済発展の背後に潜むコストや負荷を周辺部に押しつけてきたのである」
引用:斎藤幸平 人新世「の資本論」
何だか難しいことをおっしゃっているようですが…
つまり、先進国や大企業が経済発展を進める以上、いくら環境問題に配慮しようとしても、そのゴミ処理や化学物質の処理などの負担を負うのは途上国で、根本解決には繋がらない。
そういうことだと思います。
資本主義が従来のまま変わらなければ、地球温暖化や環境問題の根本解決はできないということです。
地球温暖化や環境破壊を抑制するにはシステムの変更が必要
永続的な経済成長を追い求める資本主義が続く限り、地球の気温上昇、環境破壊は避けられない。それが斎藤幸平さんの主張だと思います。
その上で、斎藤幸平さんは、システムの変更が必要だと言います。
どのように変更するのか?
それは「脱成長コミュニズム」です。
???
なかなかこれは普段聞き慣れない、難しい言葉です。
すごく簡単にまとめるよう努力してみると…
脱成長コミュニズム(コミュニズム=共産主義)とは、今までのように経済の発展を過度に行わないよう、政府など大きな力を持つものが経済を適正に管理をする。
例えば物の生産量を制限したり、企業を国営にしたりする。
今までは、お金持ちはどんどんお金持ちに、貧しい人はどんどん貧しくなっていた。
でも企業が適正に富を分配することで、貧富の差もなくなる。
これにより、過度な開発による環境破壊は抑制され、貧困のあまりお金稼ぎのため保護生物の乱獲をしたり身体や自然に悪い化学物質を使う必要もなくなる。
こういうことだと思います。
(私も経済のプロではないので、誤解を生むかもしれないことはご容赦ください)
お金持ちは困るかもしれませんが、貧しい人は救われるし、自然も助かる。
結果として世界の気温上昇も抑えられる。
しかし、長い間この資本主義で甘い汁を吸ってきた資本家たち、更には我々先進国の人間が、
「さあ、経済成長をやめて、みんなで足並みそろえて、節度ある生活をしよう!」
と急に言われても、難しいですよね?
そして実は、過去にこれに近いことをやった国もあるのです。
ソビエト連邦がその代表例ですが、このような国はほとんどが失敗に終わりました。
良い面もありつつ、政府が悪い意味で独裁的になってしまったり、住民の資産が奪われたり、様々な悪い面があって、失敗したのです。
そういう意味では、資本主義というのは、金持ちが大儲けしつつ、一般市民が騙されやすい、都合のいいシステムなのかもしれません。
だから長く続いている。しかし、そろそろ限界を迎えつつある。
過去の社会主義、共産主義の失敗が再び起こらないように、似たようで全く新しいシステムが必要です。
社会課題の解決を中心にした会社をたくさん作る
そんな都合のいいシステムなんてあるの?過去に散々失敗してるのに。
その通りで、なかなか難しいのが現実のようです。
斎藤幸平さんの「脱成長コミュニズム」。
やはりこの「脱成長」というとこが鍵になりそう。
そして、ほぼこれの”答え”のような活動をしている企業というか、グループが日本にあるのです。
それは「ボーダレスグループ」。
ボーダレスグループは2007年に田口一成さんが創業し、社会課題を解決したい起業家が集まった「社会企業化のプラットフォーム」です。
2020年度の年商はグループ全体で55億円、2021年4月現在、世界15カ国で約1500人が働いているそうです。
このグループの特徴は、社会課題の解決を中心に置いて、その解決手段の中で儲けを出すこと、にあります。
「我が社はお客様の健康のために、無農薬のお茶を作りました。どこよりも安心、安全です」
こんな考えも悪くはないかもしれません。
でもボーダレスグループは、
「この地域の人たちは葉巻タバコの生産で生計を立てているが、大量の農薬で健康を害している。しかも商人に買い叩かれて生活もままならず、他の良い手段も自分たちでは見つけられない」
と、課題をしっかりと深堀りして、その解決手段を考えながら、稼いでいける方法を模索しているのです。
実際にこの葉巻タバコの例はボーダレスグループのお話ですが、農薬が必要な葉巻タバコの代わりに無農薬のハーブ栽培方法を伝授したり、工場を設立して雇用を創出したり、貧困問題も解決しています。
更には、その事業で得た余剰利益を、同じグループ内に「恩送り」として貯めています。
その恩送りされた資金は、新しい事業立ち上げのお金にしたり、グループ内で支え合っているのです。
この方法で実際に売上もしっかり得ているところが、また素晴らしい。
その上、起業家である社長の給料の上限を決めており(例えばいくら稼いでも1500万円まで)、あくまで余剰資金は”社会課題の解決”に使うというもの。
少しでも多くの社会課題の解決にフォーカスして、経済成長は狙わない(結果として成長するのは良し)、そのためにグループ内で協力しあう。
これこそが斎藤幸平さんの言う「脱成長コミュニズム」です。
実際、田口一成さんの著書「9割の社会問題はビジネスで解決できる」に斎藤幸平さんが次のようにコメントを寄せています。
「豊かな脱成長経済へ。これからのビジネスの条件はすべてここに記されている」
一人一人ができることを、小さくても始めることが大切
ずいぶん難しい話になってしまったように思いますし、私自身も書いていて簡単に整理できない話です。
脱成長経済だったり、恩送りだったり、とても規模が大きい話でなんだか着いていけないような気持ちになったとしても、わかります。
でも、まずは1人1人が小さな一歩でも、何か解決したいという思いで行動することが大切だと思うのです。
その1つ1つが、子どもたちの未来に繋がっていく。
「でもね、子育てで精一杯で、正直それどころじゃないんだよ」
そんな声も聞こえてきそうです。というか、実は我が家もそんな状態。
ここまで読んでくださってとても嬉しいですが「正直それどころじゃない!」という方のために、続きの記事も追って書きたいと思いますので、ご興味あれば読んでいただけると嬉しいです。